昭和が見ていたレトロ・モダン
「昭和レトロをコンセプトにデザインしてほしい。」
クライアントからの要望です。
昔の雰囲気をデザインする事は本当に難しい。
形や見た目は再現出来ても、一番大切なコトが表現出来ないと思うのです。
アミューズメントパークを想像して頂ければわかりやすいと思いますが、
娯楽施設としては成り立っても、本物の食を提供する空間としては、
きっとクライアントが想像するものとは違ってくると思います。
一般的に想像される「昭和レトロ」をデザインし、パースや模型にしてプレゼンテーションすれば
おそらくOKはもらえるでしょう。
しかし、竣工したら「何か違う」と感じてしまうと思います。
僕はこういった依頼の場合、極力イミテーションを排除します。
模倣ではなく、抽象化したデザインにするか、本物のアンティークを使います。
白と黒、木と金物、男と女。
相反するモノは使い方さえ間違わなければ、とても美しいモノを生み出します。
ただ、立地は外国です。
もっとわかりやすいデザインの方が良いのではないか?
プレゼンテーションの前に自分の中で葛藤がありました。
でも、僕はこの空間で働く「ヤツ」の事を良く知っています。
僕らは昭和生まれですが、「あの頃」を感じながら生きてきた訳ではありません。
でも、今よりずっと自由だったし、たいていの事は許されていたと感じます。
その頃の活気や、今とらわれすぎている常識を、軽く超えてくれる男だと思っています。
そんなヤツが表現する「昭和レトロ」は、異国であっても模倣であるべきじゃない。
「昭和が見ていたレトロ・モダン」
あの頃の人が見ていた、そして、その想像を超えた空間が出来るのを楽しみにしています。
西山 徹 / Tohru NISHIYAMA