交野市美容室
クライアントと初めてお会いしたのは、ちょうど1年ほど前です。
今回は建築からの案件ですが、我々インテリアデザイナーにとって初回打合せから着工まで1年は稀にみる長さです。
建物としても木造平屋なので、商業空間としては建築家からしても長く感じるのではないでしょうか。
デザイナーといえば、周りからみると華やかな職業に思われるかもしれません。
しかし、「ここが丸、三角、四角・・・」などデザインしている時間は仕事の1割ほどかもしれません。
この物件はまさにそれを証明するかのように、デザイン以外の部分で多くの壁がありました。
インテリアデザインはアートではありません。
完成された空間には人ありきで、それまでの過程でも多くの人が関わる以上、
デザイナーである前に一人の社会人であることが必要です。
デザインについて。
住宅街に造られるこの建物は、デザイナーと呼ばれる人が設計をすればどんなデザインでも目立つだろう。
美容室は、「ステータスの提供」の場である。
自分を磨く事を目的とした需要者にとって、その空間は常に時代の最先端であるべきかもしれない。
しかし、交野という街に耳を傾けてみる。
昔から足を運んで頂いている方々が、今までと同じようにリラックスでき、
且つ、普遍の中に新しさを感じられる。
今、交野という街に馴染んでなくてはならない。
且つ、数十年後、色褪せてはいけない。
都会に憧れる地元の若者が、踏みとどまるように、
自慢の場所になるように。
その一つ一つの積み重ねが、交野の未来に繋がるように。
ココから始まったと言われるように。
交野市だからこそ出来るデザイン。
今、交野市でするべきデザイン。
そういった意味で、竣工後の世間の評価が楽しみなのです。
西山 徹 / Tohru NISHIYAMA